たかがリウマチ、じたばたしない。

2015年に不明熱で入院、急性発症型の関節リウマチと診断された中高年男子。リハビリの強度を上げつつ、ドラッグフリー寛解≒実質完治を目指しています。

寛解なのに痛むなんてあり得るだろうか(その1)

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ξ  

この記事は、5月22日(日)夜に書き始めています。

今夜は満月なのです。よく晴れて南の空にあるのです。

 

カーテンを開けると部屋の床を低く奥まで照らします。

電灯を消して真っ暗にし、妻とカーテンを開けたり閉めたり、月あかりのかたちをいろいろ試したり、床からのきれいな反射が壁さえ新たにして、寝るには惜しく、床の木目に指を立てたり反らしたり、子供のように影絵を遊んで過ごしたのです。

 

ξ 

さて本題、わりとよく聞くのが、医師から寛解と言われたのにあちこちの痛みが続いているという声です。

僕が目指すのも寛解ですからたいへん気になります。

しかし寛解なのに訴えるほどの痛みがあったりするのでしょうか。

痛みがほとんどないのが寛解なのではないでしょうか。

結論を先に言ってしまえば、寛解であれば関節リウマチに起因して関節が痛むというような症状はほとんどないと思います。

痛みがあるとすれば、寛解というものに医師か患者かいずれかに勘違いあるのではないかと思っています。

 

ξ 

まず寛解とは何か確認するために関節リウマチの治療目標をみてみます。

関節リウマチという病気の活動性をとること、すなわち炎症を抑えること(患者自身としては腫れや痛み、検査では血沈やCRPが高い値をとることや、関節エコーをみることで炎症があるかないかが確認できます)、さらに関節リウマチで関節が破壊されないようにすること、そして関節リウマチであってもごく普通の生活ができるようにすることが、最終の目的です。

この目的を達成するために、まずは関節リウマチを落ち着かせること(これを臨床的寛解(かんかい)と呼んでいます)を目標にしようというのです。

(リウマチ情報センター)

 

ξ 

つまり、

  1. 関節の炎症を抑えること
  2. 関節破壊を防ぐこと、そして
  3. 関節リウマチであってもごく普通の生活ができること

が最終の治療目標というわけです。

では最初の目標となる臨床的寛解とはどういうものでしょう。

臨床的寛解は患者の訴え、関節の診察結果、臨床検査の結果によって決まります。

これはリウマチ医が病気の強さを表すいろいろな指標を用いて評価します。

用いた指標がある数値以下になれば寛解状態にあると評価します。

臨床的寛解にはX線撮影、MRI超音波などの画像による評価は含まれていません。

(リウマチ情報センター)

 

ξ 

臨床的寛解の決定的基準は無いようです。

しかし、リウマチ専門外来のある病院ではDAS-28、SDAI、CDAIなどを用いて計算していると思われます。

このうち比較的新しく分かりやすいSDAIの計算式は次のようになります。

なお、CDAIはSDAIの変数構成からCRPを除いて4個の変数にしたものです。

 

SDAI=28関節中の圧痛関節数

+28関節中の腫脹関節数

CRP(mg/dl)

+患者の全般VAS(0~10cm、ビジュアル・アナログ・スケール)

+医師の全般VAS

 

患者の全般VASとは、患者が痛みを含むリウマチの活動性、炎症の程度を答えた数値です。

全く悪くない(0cm)から最も悪い(10cm)の間でマークします。

なお僕の病院では毎回11段階型(NRS)で訊かれるので雰囲気はわかりますが、今のところアナログ型で訊かれたことはありません。

SDAIが、なぜ5種類の互いに独立とはいえない変数(因子)の一次式で表現可能なのかは調べ切れないので、その結論だけ考えるようにします。

SDAIの寛解基準は3.3以下です。つまり、SDAI≦3.3、包括的疾患活動性指標を基準とする定義と言うそうです。

以下、この基準で話をすすめるようにします。

 

ξ 

これは、ものすごく厳しい基準に思えます。

なぜなら、患者が何となく炎症っぽい痛みを感じるので患者VASをわずか2cmにしたとしましょう。

医師が患者VASからあまりに乖離しないよう患者の話をよく聞くタイプで、医師VASを1.5~2cmとすると、もう寛解とはいえなくなります。

SDAIをよく見ると、圧痛関節数、腫脹関節数、CRP、患者VAS、医師VASのほとんどが0~1くらいでないと寛解とはいえないとわかります。

また患者VASを0~1にするには、関節リウマチであることを忘れてしまうくらい心身ともシャキっとした状態でなければマークできないと思います。

患者VASは関節だけでなく全般的な症状の程度をみるので0~1より大きくマーク(低くとも2以上とか)されやすく、そうなると寛解とは相当難しいものだと思われます。

患者感覚で言えば、腫れや痛みや生活の不自由さをほとんど感じず毎日を過ごし関節リウマチが治ったかも、と思えるような状態が臨床的寛解なのだといえます。

医師の言葉で言えば、臨床的寛解であればRAによる関節炎は、ほとんどなし~軽度の範囲に入るとされています。この状態であれば関節破壊の進行は抑制されるとのことです。

 

ξ 

そうであるならば、寛解と言われた患者の痛みとはどのようなものか想像してみましょう。

 

ひとつは、圧痛は安静時の痛みですから動作時の痛みは、もし炎症反応が無ければ、別の疾患(他の膠原病、変形性関節症など)に区分されるかもしれません。

また、患者には案外難しいのですが関節痛と筋肉痛の違いが区別できず混同していれば、これも関節の炎症以外の痛みとされるかもしれません。

つまり関節リウマチの痛みにはカウントできないということになります。

 

ふたつめは、患者が血液検査の数値が良いのに痛む、と言っているケースです。

CRP、ESR、MMP-3などが正常値に入ると、寛解だ、治った、もう治療の必要がないとか医師が発言したり患者がそう思ったりしているケースはないでしょうか。

臨床的寛解の基準は前記のとおりCRPは説明変数の1つに過ぎず、痛み、腫れのほか関節リウマチの炎症に起因する身体全般の不調をほとんど感じないレベルを指すのは明らかですから血液検査だけで寛解というのなら、ただの勘違いの類と考えられます。

 

ξ 

医療講演会で聞いたのですが、概して患者は痛み、腫れ、日常動作の不都合などをより大きく感じるため患者VASが高くなるケースはやはりよくあるそうです。

 

ところで、ほとんど臨床的寛解となった場合、踏み込んで関節エコーをしても明らかな滑膜炎が認められなかった場合、どう対処するのでしょうか。

抗リウマチ薬はいよいよ減薬に向かうと思ってよいのでしょうか。(続く)