たかがリウマチ、じたばたしない。

2015年初めに不明熱で入院、急性発症型の関節リウマチと診断された中高年男子。リハビリの強度を上げつつドラッグフリー寛解を目指す。そしてゆっくりとリウマチ治療について考えていきたいと思います。

休薬して再投与を「目指す」リウマチ治療

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(写真:四国医誌 69巻1,2号 7~16 APRIL25,2013 西良浩一『腰痛治療の最前線』)

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」のこと

朝早くに、目が覚めたなら

ラジオ体操代わりのリウマチ体操である。

寝床の中の、全身の関節、特に手指のゴワゴワした感じは変わらないので

このまま1日を動き出すのはアブナイ気がするからだ。

どんなことでも知恵とリハビリだ。

 

 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」(日本老年医学会)は、減薬を考えるうえでたいへん参考になった。*1

それは「治療ガイドライン」とは異なり

特に薬物有害事象のハイリスク群である75歳以上ばかりでなく、フレイルな(原語はfrail、虚弱な)高齢者を対象にした、薬物処方の安全性に主眼を置くガイドラインと明言しているからだ。

 

慢性病患者にとってフレイルな高齢者の薬物との付き合い方は他人ごとではない。

高齢者で薬物有害事象が多くなるのは

薬物動態の加齢による変化、つまり代謝低下で最大血中濃度が上昇したり、排泄低下で半減期の延長から薬物血中濃度が上昇しやすいことと

服用薬剤数の増加があるからである。

このため腎機能や体重から投与量を設定することに加え、少量(一般成人量の1/3~1/2程度)から開始して効果と薬害事象をチェックしながら増量することとされている。

 

慢性病患者も服用薬剤数が多くまたその期間も長く

さらに関節リウマチでいえば、概して副作用に十分注意を要する薬物を使い続けているので

腎臓、肝臓をはじめとする「臓器予備能」の低下、内臓の老人化ともいえるような事態が進行している可能性は否めないと思う。

 

ガイドラインは、服用をやめるべきストップと服用すべきスタートの2種類の薬物リストを作成している。このための採択論文は2,300本近くにのぼっている。

 

ストップとは、高齢者で重篤な有害事象が出やすい、あるいはその頻度が高く安全性に比べ有効性が劣る、またはより安全な代替薬があるもののリストである。

これらは処方しないことが望ましいとしている。

また、リストは網羅されたものではなく、明らかに問題のある薬物でも実際に使われることの少ないものは省いたとしている。つまりリストにないからイケイケドンドンとはならないということである。

ただし急性期は積極的な治療が必要な場合が多いので、1か月以上の長期投与(注:こんな短いのに長期というのですか?)を基本的な対象としてリストを作ったとのことである。

 

またスタートとは、逆に過少医療の回避のため、高齢者でも有用性が高いのに現場で使用が少ないものを主に選定したとしている。

 

全体ではストップ・リストは抗精神病薬抗うつ薬睡眠薬、抗パーキンソン病薬、糖尿病薬から漢方薬まで24分類ある。またスタート・リストは10分類である。

そして医師、薬剤師、看護師、ケアマネージャーはもちろん患者とその家族もリストを参照して処方薬を確認してほしいと記載されている。

リストを仲立ちに担当医との「適切」なコミュニケーションを取ることで良好な関係の構築に役立つだろうとしている。(注:あぁ! ガイドラインが期待するように患者に耳を澄ます医師がいたら何と幸せなことだろう!)

 

ストップ と スタート

リスト全体はガイドラインそのものを参照していただくとして、発病後の僕に関係した薬物のなかからピックアップして脚注に記した。*2

その薬物名称は次のとおり。

【ストップ・リスト】

睡眠薬ベンゾジアゼピン睡眠薬抗不安薬

睡眠薬(非ベンゾジアゼピン睡眠薬

◎第1世代H1受容体拮抗薬(抗ヒスタミン薬)

◎H2受容体拮抗薬

◎非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

 

【スタート・リスト】

◎インフルエンザワクチン

◎肺炎球菌ワクチン

プロトンポンプ阻害薬

◎関節リウマチ治療薬(DMARDs)

 

ひと、フレイルな存在

ガイドラインでは、全体的なリストを補完するように疾患ごとの領域でも指針が展開されている。

これもたいへん興味深い。

関節リウマチの領域では

  1. DMARDs(ガイドラインでは生物学的製剤を含む)はどのような有害事象と関連しているか? またその対策としてはどのようなものがあるか?
  2. NSAIDsはどのような有害事象と関連しているか? またその対策としてはどのようなものがあるか?
  3. 関節リウマチの治療においてステロイドの効果は有害事象の危険性を大きく上回るか? また有害事象の危険性が高い場合どのように用いるべきか?

という設問を立てて解説している。 

僕らは、一般論としてはだいたいこれらの答えを知っている。

ここでは高齢者にとってどう考えるべきか抜粋してみる。

 

  1. 高齢者においてもDMARDsは若年者同様有効であると考えられる。
  2. 感染を含め有害事象の危険性が高まるので、インフルエンザワクチン接種、肺炎球菌ワクチン接種、潜在性肺結核対策、ニューモシスチス肺炎対策、その他日和見感染症・心血管イベント・悪性腫瘍などの定期的チェックが必要である。
  3. ステロイド骨粗鬆症感染症、消化管潰瘍、脂質・血糖値上昇、白内障などの可能性があるため短期使用6か月以内にとどめる。疾患のコントロールは主にDMARDsで行いステロイド単剤による治療は避ける。
  4. NSAIDsは特に高齢者において上部消化管出血の危険性を高める。このため選択的COX-2阻害薬、プロトンポンプ阻害薬やミソプロストールを併用することでリスクを軽減する。
  5. しかしNSAIDsはステロイドとの併用時、抗血小板薬や抗血栓薬使用時などのエビデンスは乏しく、また腎機能低下をもたらす危険性があるので可能な限り使用を控えるべきである。

 

このように、一般成人に比べリスクを大きく見積もる必要があり、使用量・使用期間の制限がうるさくなり、その他のリスク対策もこまごまとしてくる。

僕はこういう薬物への慎重さを、フレイルな高齢者予備軍である慢性病患者が意識するのは当然だと思う。

 

まずは減薬・休薬、再燃したら再投与

関節リウマチは短期的な副作用はある程度覚悟して十分薬物を使い、しっかり叩いてしまうものと僕は刷り込まれてきた。

競争して有効な薬物を開発し、有効性が有害事象を上回って最大となる投与量を見つけ「治療ガイドライン」に反映させていく仕組みは医療側で疑われることはないのかも知れないが、これは社会フレームの要請である。

病者は修理工場に入れて、治って良かったね!と言われながら、さっさと社会に戻して再び有用性を発揮すべき機械のような存在である、というファンタジーが偉大なるとして信じられ社会フレームが作られているからである。

もうこの辺でいいです、と言ったら医師は自分の存在価値を否定されたようにピンとこないだろうし、患者はラクゴシャ、ロクデナシに分類されて家族・社会と物議を醸すだろう。

  

関節リウマチで最近示唆されている

病状が治まり寛解が一定期間持続したら、まずは減薬・休薬、再燃したら再投与といった

患者QOLの最大化、薬物有害事象の最小化、生命予後の改善、経済性重視の柔軟な治療アルゴリズム*3

の進化に、高齢者(や子供)への治療方法の確立は深く結びつくだろうと思っている。

これはリウマチ治療のある段階で、減薬・休薬→再燃したら再投与→減薬・休薬→再燃したら再投与といった過程を選択していくことかもしれない。

この社会のフレーム内で生きるとき、減薬・休薬を喜びながらも不安が消えない理由は、そのことで関節破壊が再発・進行しないかという、ただ一点である。

過少医療にならず患者QOLと生命予後がほとんど損なわれないことを絶対条件にできるのであれば

確かに関節リウマチと真っ向対決し続けるより、柔軟にうまくあしらう、リウマチたらしといった感じの新たな選択肢は魅力的に思える。

 

*1:未定稿版はここから読める。

http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20150401_01_01.pdf

*2:

【ストップ・リスト】 

睡眠薬

1.薬物:

ベンゾジアゼピン睡眠薬抗不安薬

2.代表的な一般名(商品名):

フルラゼパム(ダルメートベノジール)、ハロキサゾラム(ソメリン)、ジアゼパムセルシンホリゾン)、トリアゾラムハルシオン)、エチゾラムデパス)など

3.主な副作用:

過鎮静、認知機能低下、せん妄、転倒、骨折、運動機能低下

4.推奨される使用法:

長時間作用型は使用すべきではない。

トリアゾラムハルシオン)は健忘のリスクがあり使用すべきではない。

ほかのベンゾジアゼピン系もできるだけ使用しない。

使用する場合最低必要量をできるだけ短期間使用に限る。

長時間作用型は持ち越し効果、短時間作用型では健忘、依存のリスク。

代替薬:非ベンゾジアゼピン系、ラメルテオン

 

睡眠薬

1.薬物:

ベンゾジアゼピン睡眠薬

2.代表的な一般名(商品名):

ゾピクロン(アモバン)、ゾルピデムマイスリー)、エスゾピクロン(ルネスタ

3.主な副作用:

転倒、骨折。そのほかベンゾジアゼピン系と同様の有害作用の可能性あり

4.推奨される使用法:

漫然と長期投与せず、減量、中止を検討する。少量の使用にとどめる。

 

◎第1世代H1受容体拮抗薬(抗ヒスタミン薬)

1.薬物:

第1世代H1受容体拮抗薬

2.代表的な一般名(商品名):

すべてのH1受容体拮抗薬(第1世代)

3.主な副作用:

認知機能低下、せん妄のリスク、口渇、便秘

4.推奨される使用法:

可能な限り使用を控える。

 

◎H2受容体拮抗薬

1.薬物:

H2受容体拮抗薬

2.代表的な一般名(商品名):

すべてのH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー

3.主な副作用:

認知機能低下、せん妄のリスク

4.推奨される使用法:

可能な限り使用を控える。

  

◎非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

1.薬物:

NSAIDs

2.代表的な一般名(商品名):

すべてのNSAIDs

3.主な副作用:

腎機能低下、上部消化管出血のリスク

4.推奨される使用法:

1)使用をなるべく短期間にとどめる。

2)中止困難例では消化管の有害事象の予防にプロトンポンプ阻害薬やミソプロストールの併用を考慮

3)中止困難例では選択的Cox2阻害薬の使用を検討(セレコキシブなど)

その場合も可能な限り低用量を使用。

消化管の有害事象の予防にプロトンポンプ阻害薬の併用を考慮。

局所の疼痛に関しては外用薬を使用。

 

 

【スタート・リスト】

◎インフルエンザワクチン

1.薬物:

インフルエンザワクチン

2.推奨される使用法:

高齢者での接種が奨められる。特に呼吸・循環系基礎疾患を有する者に勧められる。

3.注意事項

本剤成分によりアナフィラキシー既往歴を有する患者では禁忌。

 

◎肺炎球菌ワクチン

1.薬物:

肺炎球菌ワクチン

2.代表的な一般名(商品名)

ニューモバックスNP、プレベナー13

3.推奨される使用法:

高齢者での接種が奨められる。特に呼吸・循環系基礎疾患を有する者に勧められる。

4.注意事項

副作用として局所の発赤、腫脹など。

再接種時に反応が強くでる可能性があり注意する。

 

プロトンポンプ阻害薬

1.薬物:

プロトンポンプ阻害薬

2.代表的な一般名(商品名)

オメプラゾール(オメプラール、オメプラゾン)、ランソプラゾール(タケプロン)、ラベプラゾール(パリエット)、エソメプラゾール(ネキシウム)

3.推奨される使用法:

胃食道逆流症(GERD)/非びらん性胃食道逆流症(NERD)の高齢

4.注意事項

1年以上にわたる常用量を超える投与は避ける。

 

◎関節リウマチ治療薬

1.薬物:

DMARDs

2.代表的な一般名(商品名)

メトトレキサート(リウマトレックス)、ミゾリビン(ブレディニン)

3.推奨される使用法:

活動性の関節リウマチの診断がついたとき

4.注意事項

薬剤の選択は関節リウマチの活動状況や個々の患者の全身状態による。

高齢者では薬物有害事象や易感染性の危険性が高まるため、治療開始前および開始後定期的にモニタリングを行う。

*3:

www.zakzak.co.jp