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安保徹氏が提唱する自律神経免疫療法は、自律神経のバランス(白血球の中のリンパ球と顆粒球の割合)を整えて免疫力を高め、病気を予防・治癒させる療法*1とされています。
免疫力とは何かについては以前、話題にしましたが*2、リンパ球と顆粒球の割合を整えて本当に病気を予防したり治したりできるのでしょうか。
ξ
脚注書では、リンパ球35~41%(実数2,200~2,800)、顆粒球54~60%(実数3,600 ~4,000)を「理想値」とし、これに近付けることがよいとしています。
花粉症に代表されるアレルギー性鼻炎について本書の記載をみてみましょう。
副交感神経優位のリンパ球が過剰な状態に過剰な抗原やストレスなどが加わって起きたのがアレルギー性鼻炎です。・・・・薬で症状を止めるとアレルゲンを体内に残したままになり、リンパ球は増え続けて症状はますます悪化していきます。
そこで治療法ですが、
治療は自律神経の傾きを修正することです。・・・・・体を動かして交感神経を刺激することもいいでしょう。
ξ
さて、僕が花粉症で具合が悪かった時のリンパ球と顆粒球(Neutr、Eosino、 Basoの計)のバランスを見てみましょう。2013年3月のデータです。
リンパ球 16%↓ 顆粒球77%↑
これは顆粒球増多の過剰な交感神経の緊張状態と言われるケースでしょう。
こういうとき僕は、ガンガン交感神経を刺激するよう徹夜同然の仕事や運動に没頭すべきでしょうか。甘いものをどんどん食べるべきでしょうか。
あり得ないことです。正反対のくつろぎが必要でしょう。
本書と正反対のこの症状をどう説明するのでしょう。
安保式の説明をするとすれば、顆粒球増多の交感神経緊張状態により組織破壊による炎症がおこりもともとの鼻炎を増悪させたということになるでしょうか。
本書の記載と正反対の分画検査結果である点はさておき、この場合、ジタバタせずくつろいで過ごすことは、別に白血球の分画など持ち出ださなくとも当たり前の対策として思いつくものではありませんか。
なぜなら花粉症には熱感や倦怠感などの全身症状が伴うものだからです。
ξ
やがて花粉症の時期が去り同年7月の健康診断では次のように変わりました。
リンパ球30% 顆粒球63%
本書の理想値と称する値には達しませんが、構成比は健康診断の基準値内です。
リンパ球を増やそうとしたり顆粒球を減らそうとしたり特に対策をしたわけでもなく花粉症の時期が過ぎただけで、同年7月にはもう変化しているのです。
花粉症の時期を過ぎ顆粒球が減少しただけで、特にリンパ球が増加し過剰になったわけではありません。
ξ
さて、まとめてみます。
アレルギー性鼻炎から期待されるリンパ球と顆粒球のバランスは、リンパ球の増多状態とされていますが僕の罹患時のデータとは全く異なっています。
つまり特定の疾患、たとえばアレルギー性鼻炎は、過剰な副交感神経優位の病気であり、リンパ球を減らすよう体外から刺激すれば治るというのは正しいとは言えないのです。(A)
また白血球の分画検査結果は、その時点の全身状態の反映と考えられますから、特定の疾患、たとえばアレルギー性鼻炎と結び付けても期待されるようなデータが得られるとは限りません。(B)
(A)、(B)の事例判断からして、せいぜい言えるのは、交感神経と副交感神経いずれかの優位によりバランスが取れない事態が続いた場合、何らかの病気になる可能性があるということだけなのではないでしょうか。
ξ
特定の疾患を治療するため白血球に外から刺激を与えて調節する療法を考えてみたところで、環境と微妙で複雑なやりとりをしている免疫システムが期待どおり反応するとも思えないのです。
「免疫力は『人が簡単には死なずに済む仕掛け』というくらいにとらえる」(岡田正彦氏)のが正しいように思っています。