ξ
きょう木曜日は祝日、パラダイムシフト後の早期関節リウマチ患者の中間総括です。
かつて「NHKガッテン!」で早期関節リウマチの特集をしたことがありました。
当時、縁は無かったので観ていませんでしたが、関節リウマチの早期診断・早期治療の重要性について特集したものでした。
(当初、ここに入れていた「ためしてガッテン」の該当リンク先は無くなったようです。)
写真のAさんとBさんはいずれも早期関節リウマチとの診断でした。
しかしAさんは指が変形するほど骨破壊が進行してしまいました。
この差はどこにあったのでしょう。
ふたりの患者の発症から診断までの期間は、
Aさん 1年10カ月
Bさん 2カ月
で、番組ではここに最大の差があったとしています。
サイトカインが免疫細胞に指令を出して関節を攻撃してしまう場合、ウィルスや細菌のように関節は排除できないので、攻撃力を強めようとサイトカインが急増する時期があるそうです。
これを「サイトカインの嵐」といい発症から6カ月経ったころに起こると考えられています。
つまりAさんとBさんの症状の差は治療開始が「サイトカインの嵐」以前か以後かの違いにあったといいます。
ξ
1999年にメトトレキサートが、2003年に最初の生物学的製剤が承認されてから関節リウマチ治療のパラダイムシフトが起こったといわれています。
事実、ここ10年(2005年以降)の処方割合の推移統計をみると
増加の一途がメトトレキサートと生物学的製剤
減少の一途が従来型抗リウマチ薬、ステロイド、NSAIDs
です。
ところで発症してすぐ関節リウマチと診断する方法、早い時期に診断して早期治療に取りかかるための診断基準はどのようなものでしょうか。
骨破壊が最初の1~2年以内に急速に起こってしまうことに対応した世界的な早期診断の基準はどのようなものでしょうか。
アメリカとヨーロッパのリウマチ学会(ACR/EULAR)が新しい分類基準を示したのが2009年ですからほんの最近であることに驚きます。
基準そのものは簡単で次のような流れです(ACR/EULAR,2009を書換え)。
●関節腫脹が1か所以上ある
↓
●他の疾患で説明がつかない
↓
●通常のX線上で骨びらんがみられたら関節リウマチとみなす
↓
●骨びらんがみられない
↓
●得点評価(圧痛・腫脹関節数、RF因子・抗CCP抗体、滑膜炎の期間、CRP・ESR)
↓
●6点以上ならば関節リウマチとみなす
関節腫脹が1か所でもあれば関節リウマチを疑うことができるというスタートがなかなかいいです。
なお発症期でも滑膜炎がよく視えるエコー検査装置は、リウマチ専門外来のある病院なら当然あるでしょうが、簡易型エコーならば整形外科医院でも利用しているところが増えています。
この2年間の整形外科経験では3か所中2か所は簡易型エコーがありました。
いずれも若手医師が開業しているところで、昔っからの爺さん医院にはありませんでした。
ξ
現在ではwindow of opportunity(治療効果の最も高い限られた時期)を、関節リウマチから縁を切る絶好の機会ととらえるべきで、のがしてしまう理由がないでしょう。
現在はメトトレキサート(MTX)やバイオ医薬品(抗TNF製剤など)の使用により早期であればリウマチの進行を止めることが可能になりました。さらに今後新しい薬が次々と開発されていくと期待されています。 (中略)
早期に治療しないと関節の破壊が進み、元のように回復することができなくなります。
この期間をwindow of opportunity と呼び初めの2年間くらいと考えられています。
本格的な治療はこの中ではじめられるべきです。
(リウマチ情報センターHP)
メトトレキサートのような抗リウマチ薬の副作用対策として、血液検査結果や肺病変に注意し、感染症となれば早期治療に努める必要があります。
ただし体験的にはほとんどの副作用は減薬・中止すれば改善することがはっきりしているのであまり心配することもありません。
早期の関節リウマチと診断されていたなら、少なくとも3カ月ごとに効果判定し抗リウマチ薬の増量・変更・併用をするT2Tと呼ばれる標準的な治療を開始した方が良いと思います。
その方がアトでこじらすよりずっと楽だと思えるからです。
こうして早期診断・早期治療の結果もたらされる寛解*1や休薬期間の延長=実質完治(「ドラッグフリー寛解」)という将来すら想像できる事態の方が健全で精神衛生上もよいと思っています。