たかがリウマチ、じたばたしない。

2015年に不明熱で入院、急性発症型の関節リウマチと診断された中高年男子。リハビリの強度を上げつつ、ドラッグフリー寛解≒実質完治を目指しています。

レディー・ガガと線維筋痛症

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ξ 

記事を書いてみたいという衝動が訪れ、頭の中で仕上がり、あとはキーボード作業に移していくだけというような時に、突発的にオッというようなニュースに出会うことがある。

きょうは、レディー・ガガ線維筋痛症で演奏活動を休むというニュースがそれだった。

 

アメリカの人気歌手レディー・ガガさんが、全身の筋肉に強い痛みなどの症状が出る「線維筋痛症」を患っていることを自身のツイッターで明らかにし、現在行っているワールドツアーが終わることし12月以降、活動を休止する意向です。

  

レディー・ガガさんは12日、自身のツイッターで、関節や筋肉など全身に強い痛みやこわばりなどの症状が出る「線維筋痛症」を患っていることを明らかにしました。


この病気は、はっきりとした原因がわかっておらず、睡眠障害うつ状態など日常生活にさまざまな支障を来すこともあり、日本でもおよそ200万人の患者がいると推計されています。


ガガさんは病名の公表に先立って、現在行っているワールドツアーが終わることし12月中旬以降、闘病のため活動を休止する意向を表明していましたが、病名や休止の期間については明らかにしていませんでした。


病名を公表したことについて、ガガさんはツイッターの中で、「病気に対する理解を広めるとともに、同じ病気に苦しむ人どうしをつなげる一助になることを願う」とコメントしています。(NHK NEWS WEB 9月14日 6時14分)

 

線維筋痛症という疾患名をたまたま僕が知っていたのは、リウマチ性疾患に合併して起こりやすいと言われていたからだ。

日本での推計患者数は200万人、男:女=1:4.8と、関節リウマチ同様、女性に多い。一方、関節リウマチ患者は70万人といわれているから、なんだって? リウマチの3倍もいるの? と驚いた記憶がある。

推計方法が違うだろうからそういう比較は無理だろうが、関節リウマチ以上にその疾患名が知られていないのは事実だ。日本では2003年に厚労省が全国疫学調査を始めてようやく認知されはじめたそうだ。

もっとも、レディー・ガガ自身が、ツイッターで「病気に対する理解を広めるとともに」と願っているのだからアメリカでも社会的な認知は低いのだろうと想像している。

 

ξ

「教科書」によれば、膠原病では①関節リウマチ、②シェーグレン症候群、③全身性エリテマトーデスの順に線維筋痛症との合併頻度が高いそうだ。

その典型的な症状は、①全身痛、筋肉痛、関節痛、②疲労・倦怠感、③睡眠障害、④頭重感、頭痛、⑤こわばり、である。

そのほかに、しびれ、めまい、便通異常、月経困難症、頻尿、不安感・うつ、などが伴うことがあるというのだから、いったいどの診療科にいったら診断が確定できるのかと思う。

病院に心当たりがなければ、日本線維筋痛症学会の診療ネットワーク参加医療機関*1を参考にすることができる。

 

ξ

ただし線維筋痛症の診断は相当難しいと思われる。

まず臨床検査では、血液検査、関節画像診断(MRI、エコー)、頭部画像診断(CT、MRI)、筋電図・神経伝道速度検査において異常所見なしが前提である。(他の疾患の合併を認めないという意味ではない)

そして次に、うつ病のような精神疾患慢性疲労症候群CFS)などとの鑑別が待ち構えている。

また、線維筋痛症友の会(JFSA)HPには、薬剤治療に加え次のような代替治療が列挙されている。

・運動

・エアロビクス

・ストレッチング

・健康なライフスタイルの維持(規則的な睡眠)

・ダイエット

・ストレス減少技術

・深呼吸(腹式)

・筋肉弛緩

・瞑想 など

これらは別に線維筋痛症に特化した代替治療ではないのだから、逆にこの疾患は治りにくいのだと表明しているようなもので、診断が確定したところで完治が約束されるわけではない。

 

ξ

痛みを抱える患者に必要なのは、原因の可能性のある疾患を徹底的に治療することだと思う。

どんな検査でも異常が出ないというのは実際には少数派だと思われる。

悪性腫瘍とか重篤感染症はもちろん慢性的な変形性関節症、脊柱間狭窄症、泌尿器疾患、甲状腺機能低下症、関節リウマチ、それ以外の膠原病精神疾患などの徹底治療が先決だと思う。

基礎疾患治療の段階で、痛みを放置しない、我慢しないというように心掛け(具体的には線維筋痛症に準じた幅広い治療・施療を行う)、感覚神経の「記憶」に残らないようにしていくことがつくづく大事だと思った。

大切なのは線維筋痛症という診断名を得ることではない。

 

ξ

線維筋痛症の診断基準のうち1990年のACR基準によれば、約4kgの指圧力のもとで圧痛点18か所中11か所に圧痛を認めれば線維筋痛症とみなすとのことである。また、5~10か所では慢性広範囲疼痛という前駆的な疾患として治療されるという。

診断基準はこのようにいつでもデジタルであるが、患者の苦痛はアナログなので、あまりに形式的に振り分けることはできないだろう。

 

僕は、関節リウマチが好転しているのにもかかわらず、関節のみならず身体各所に筋肉痛のような新たな痛みを抱えていたので、発症後1年半の時期に、これら圧痛点の触診など受けているが、圧痛の場所がかなりずれていて、その時点では線維筋痛症は除外され現在に至っている。

 

例によって社会的認知度の低さが怠け病や仮病と誤解されたり排除されたり、その結果、他の慢性疾患同様、患者の生活維持が不安定になっている可能性もあるが

線維筋痛症それ自体では、健常者に比べ生命予後が悪いとか、関節が変形するとかの将来懸念はまったくないとされているので、このことは患者にとって、レディー・ガガにとって、「再生」の道筋の救いではないかと思っている。