たかがリウマチ、じたばたしない。

2015年に急性発症型の関節リウマチと診断された中高年男子。リハビリの強度を上げつつ、ドラッグフリー寛解≒実質完治を目指しています。

<続>「寛解以後」の世界に、どう対処していくのか

これは

「寛解以後」の世界に、どう対処していくのか

の続きです。

 

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ξ

「『寛解以後』の世界に、どう対処していくのか」を考えていたとき、偶然、リウマチ情報センターにアップされていた「炎症フリーの時代の関節リウマチの疼痛治療について」という研修会記事を読んだ。

これは

関節リウマチを始めとするリウマチ疾患は主に「炎症」をコントロールすることに主眼が置かれてきた。

しかし、MTX、生物学的製剤の登場と共に「炎症フリー」という状態に持ち込めるようになった。

また「炎症」が関連しないリウマチ類縁疾患として線維筋痛症など疼痛性疾患も治療の対象となりつつある。

という背景認識のもとに解説されている。

これには僕は目を丸くした。

 

寛解以後」の世界 と 「炎症フリー」の時代

は猛烈に重なると思えたからだ。

 リウマチ医が薬物や外科手術のスキルこそ使命と、いかに関節リウマチ治療を限定的に考えようと

治らない持続的な疼痛、心身愁訴への対処が、関節リウマチの治療ステージとしてあり得る!ことを明確に宣言してくれたからだ。

 

僕は、自分の痛みを観察し続けるなかで

  1. 関節リウマチは、多様な症状を持つ全身性疾患なのに「関節リウマチは関節炎です」と言ってはばからない有力医師もいる、そして炎症は治まりかけても、治まらない身体愁訴に打つ手無く無関心を装う。
  2. 慢性疼痛を、通りいっぺんの検査で器質的な原因がはっきりしないからといって心因性にしてはならない、いったんは徹底的に器質的な原因が追究されなければならない。

というようなことに気付き、そう書き続けた。*1

 

ξ

ある恐怖があり、それに起因して胃痛が起こったとする。

そして原因である恐怖が過ぎたら胃痛が治まったとする。

これは心因性の痛みといってよいと思う。治療の対象になるとも思えない。

 

しかしある恐怖に繰り返し襲われ、その結果、脳神経が過剰に興奮しやすくなったり機能低下を起こす*2ようになったとする。

またついに胃には潰瘍が生じ出血も見られたとする。

 

このような場合、脳神経にも胃にも、はっきりとした器質異常があるというべきであり、急性期には胃潰瘍のみならず興奮を鎮めるなどの投薬治療も必要になるだろう。

 

現在の診断技術で脳神経、内分泌、免疫系などの器官に病理的異常が見つけにくいからといって、痛みを非器質的疼痛、心因性疼痛として簡単に仕分けしてほしくない。サイコ・ビジネスが揉み手してすりよって来そうである。

 

ξ

機能性身体症候群という疾患の概念がある。

従来から病因のわからない症状の頻度が高いものに

関節痛37%、背部痛32%、疲労感25%、頭痛25%、腹痛24%、めまい23%(Kroenke,1993)などがあり

これらは専門診療科ごとに、様々な病名で呼ばれていたり病名がつかなかったりしていたが、近年、一つの疾患概念でとらえられるのではないかと提唱されたそうである。

機能性身体症候群とは僕のようなアマチュアには病因がわからない段階での過渡的な区分にもみえるが、疾病の治療領域をずいぶん広げてくれたのではないかと思える。

 炎症フリーの時代の関節リウマチの疼痛治療について(抜粋)

(尼崎中央病院 整形外科第2部長  大阪大学疼痛医療センター  三木 健司 先生)

 

通常、器質的な「痛み」は侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に分類され、それ以外の器質的疼痛でないものは全てが心因性疼痛と分類されがちであるが、器質的疼痛でないものの中に機能性疼痛症候群も存在すると考えられている。

機能性疼痛症候群は、King's College LondonのSimon Wesselyが提唱した機能性身体症候群という概念に含まれるものである。

機能性身体症候群は諸検査で器質的あるいは特異的な病理所見を明らかにできない持続的な特異な身体愁訴を特徴とする症候群で、それを苦痛と感じて日常生活に支障を来しているために、様々な診療科を受診する。

過敏性腸症候群」はその代表的なものであり、以前は心因性と言われたこともある病態であるが、現在疾患の認知度が進み、5-HT3受容体選択的阻害剤による治療が多くの一般医療機関にて行われている。

近年、運動器慢性疼痛の治療薬の研究が進み、急性痛と異なりプロスタグランジンではなく、下降性抑制系でのセロトニンノルアドレナリン、中枢でのグルタミン酸などに作用する薬剤が治療薬として使用されるようになった。

関節リウマチが適切に炎症コントロールされた状態において、下降性抑制系に作用するトラマドール・アセトアミノフェン配合錠や抗うつ薬を使用することにより、患者の感じる「痛み」やADLを改善することができるようになった。

機能性疼痛症候群という考え方を導入することで、器質的でない「痛み」を心因性と決め付けることなく、治療できることは患者にとっても、医師にとっても有用なことであると考えられる。

線維筋痛症の治療に対しても治療薬が登場し状況は改善しつつあると考えている。

(リウマチ情報センター http://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/kensyu/carereport24/kyoto_kohen.html

 

*1: 

yusakum.hatenablog.com

 

*2:

慢性腰痛と背外側前頭前野DLPFCの機能低下の関係は最近よく言われている。