たかがリウマチ、じたばたしない。

2015年初めに不明熱で入院、急性発症型の関節リウマチと診断された中高年男子。リハビリの強度を上げつつ、ドラッグフリー寛解≒実質完治!を目指しています。

炎症する身体  その1

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https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180824/k10011592111000.html

 

 慢性疲労症候群について思う

 

夫が台所に立ち、妻がごく近いテーブルで伏せっている情景(写真)はショッキングだ。

何か重い疾患や過度の不調を思わせ、その胸騒ぎが決して幸福なシーンには見せない。 

 

ワタシは関節リウマチに併発しやすいといわれる線維筋痛症については、その診断を受けに行った経過もあり何となく知っていたが、慢性疲労症候群の病態は全く知らなかった。

国内の推定患者数は30万人とたいへん多く、相当の割合で寝たきりの患者もいるという(厚生労働省調査では対象にした患者の3割が寝たきり)。

原因はよくわからないらしいし治療法も確立していないそうだ。

 

NHKがインタビューした女性(37歳)の発症は、突然の40度を超える発熱から始まっている。

そして奇妙な症状に襲われるようになる。

 

その日から重く、つらい疲労感に悩まされるように。

“動きたくても動けない”

子どものころからの憧れのパティシエの仕事さえも、通勤だけで疲れ果て、働けずに帰宅を余儀なくされるようになりました。

症状は日に日に悪化。仕事も続けられなくなりました。

「働きたいという気持ちがあるのに、働けない。友達と会いたくても、なかなか会えない。社会から孤立してしまう怖さがありました…」

不安と焦りと向き合う日々だったそうです。

“自分の体はどうしてしまったの?”

その答えを探しに、病院で検査を重ねましたが、病名はわかりませんでした。

 

News Up 推定患者数30万人 “理解と支援を” | NHKニュース 

 

 

ξ

この女性が慢性疲労症候群と診断がつく病院に到達するまで1年近くかかっている。

ワタシなどは高熱と聞けば、体験的に、何かの感染症か体内の炎症がその原因になっていないかとつい思ってしまう。

 

慢性疲労症候群の患者が訴える症状で、ワタシが驚いたのは次のような実態調査結果(厚生労働省研究班)のグラフだった。

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「眠れないほどの激しい痛み・強い痛み75%」や「痛みで眠りが浅い63%」などワタシにとって<日常茶飯事>ではないか、慢性疲労症候群でも痛むという症状があるのかと驚いた。全く知らなかったのである。

 

ξ

この病気に無知だったワタシがさらに驚いたのは、PETという(たいへん高額な)陽電子放射断層画像法により、慢性疲労症候群の患者には、脳神経の炎症反応が広くみられ、それが脳機能の低下に関係していると確認された報告である。*1

 

従来から、患者の血液などには炎症性サイトカインのわずかな上昇があることが知られており、脳内での炎症とそれによる脳機能の低下が慢性疲労症候群の病態に関係しているのではないかと推測されていたそうである。

 

 PETで確認できたのは

A:視床、中脳、扁桃体の炎症と認知機能障害は正に相関し、炎症が強いほど症状が重い。

B:海馬の炎症と抑うつ症状は正に相関し、炎症が強いほど症状が重い。

C:帯状回視床の炎症と頭痛や筋肉痛の痛みは正に相関し、炎症が強いほど症状が重い。

というようなことである。

 

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A:視床、中脳、扁桃体の炎症と認知機能障害は正に相関し、炎症が強いほど症状が重い。

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B:海馬の炎症と抑うつ症状は正に相関し、炎症が強いほど症状が重い。

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C:帯状回視床の炎症と頭痛や筋肉痛の痛みは正に相関し、炎症が強いほど症状が重い。

 

脳内の炎症に関わるのはマイクログリアアストロサイトと呼ばれる免疫担当細胞(グリア細胞)である。

この細胞は、脳の障害時や病原体の感染時に活性化し壊死細胞や異物の除去など脳内の免疫反応を担当する

 

これが継続的に活性化(炎症)しているのなら、何らかの原因で脳に障害が生じているのではないか、(まるで関節リウマチにおける)獲得免疫*2の振舞いのように、自らを継続的に攻撃する自己免疫のような異常応答が起こってはいないかと、ワタシは勝手に想像・危惧する。

 

ξ

また最近、うつ病について自然免疫系による脳内炎症(⇒神経細胞の機能低下)に関する重要な発見があったと報告されている。*3

これは自然免疫分子を標的とした新たな抗うつ薬の開発につながる可能性があるそうである。

この場合も脳内の免疫担当細胞であるマイクログリアが活性化して炎症性サイトカインを発現させている。

 

従来から、慢性疲労症候群によく似て)うつ病患者の血液中では炎症性サイトカインが上昇することがわかっており、うつ病と炎症との関係が示唆されていたそうである。

 

ξ

何だか不思議な気分になる。

身体・脳の炎症をキーワードにすれば、自己免疫疾患、自己炎症疾患、心血管系疾患、慢性疲労症候群うつ病線維筋痛症などの疾患(そして人の老化現象も)がつながってしまいそうである。

そのとき人はなぜ、若くても年をとっていても全生涯を通じ、慢性炎症など起こすのかという、ややこしい問いが浮かんでくる。

 

ついには「人体自然発火現象」*4という昔から語られてきたミステリーが、頭に浮かんできたりする。

すぐに答えの見つからない自嘲に、ふざけたくなっていたみたいだ。

 

病気の「再燃」という言い方は、いかにも炎症性疾患にふさわしい。

この炎症なるもの、しばらく考えさせられている。

 

 

*1:

慢性疲労症候群と脳内炎症の関連を解明 | 理化学研究所

*2:

自然免疫と獲得免疫:免疫反応は、自然免疫と獲得免疫からなっている。自然免疫は、外来病原菌などの侵入に対し初期に重要な役割を果たす(マクロファージ、顆粒球、NK細胞)。獲得免疫は、自然免疫を突破した微生物などをより強力に排除する(T細胞、B細胞)

*3:

うつ病における脳内炎症の役割の一端を解明 | 国立研究開発法人日本医療研究開発機構

*4:

人体自然発火現象 - Wikipedia:ある人が友人や同僚の家や仕事場に行ってみたら、その友人や同僚の身体が一部ないしほとんどが燃えてしまった状態で発見され、なおかつ周りには火の気が無く、人体の周囲だけが焦げ、部屋全体は燃えておらず、しかも人体そのものはほんの一部を残して炭化ないし焼失してしまっている状態で発見された、といったような事件が発生している。