ξ
ひととおりの自己抗体の検査などで、たいした異常がないとすると自己免疫疾患とは限らない。
また、3ヵ月もCRPが正常値に入らないとすれば、急性炎症とは考えにくく身体のどこかで慢性的に炎症が起こっていることになる。
ベーチェット病やクローン病のように、いくら調べても自己抗体が認められない、あるいは認められたとしてもそれが病気の本態とは考えられないものに対し、本当に自己免疫疾患なのかという議論がされてきたそうである。
そして現在では自己免疫疾患で説明のつかない慢性炎症については、自己炎症疾患として区分されるようになっている。
象徴的に断言してしまえば、自己炎症疾患は、関節リウマチのような獲得免疫系の異常ではなく、自然免疫系の異常が病態の本質と考えられている。
最初の時も、いくつかの膠原病、炎症性疾患が重複しているのではないかと鑑別に時間がかかったのだが
今回、自然免疫系の異常が露出したとすれば、多くの慢性疾患にも繋がっていく、とりとめのない感じがする。*1
最大の症状は疲労感である。
次に毎朝パジャマを干すような寝汗である。
気合の必要な日は、ステロイド(PSL)を余分に齧ったりしている。
もちろん処方の範囲内である。
一日一善ならぬ一日一事である。
事が済めば、家のソファーでゴロゴロしている。
家事はほとんどしない。
さすがに立ったりしゃがんだりでため息が出ることはなくなった。
気晴らし兼ねてウォーキング(散歩)してみる。
慣れた1時間のコース、しかし遊歩道のベンチで2回も休憩した。
つまりアルケナクナッテイル。
ステロイドしかない診断的治療は実に心細いが、さらに経過した後、ダメならまた考え直すことになる。
気の長い話だが、いったん治ったのだからまた治るはずだと思うことにする。
そして明日の仕事や、経験や、出会いの予定があり
そのために体調をなんとか整えたり準備したりの時間を過ごしているのなら
何の不満を言う必要があるだろう。
どこにあれこれ思い悩む必要があるだろう。
誰だって、わざわざ心を膨らませ続けて破裂しそうになることはない。*2
ξ
いまや視聴者の多くはテレビなど計画的に見ようとはしていないだろう。
(近所が集まってプロレス中継を観るというテレビ初期の熱狂、テレビの地位の高さは遠い、遠いムカシの話だ)
番組制作側も、視聴者が心待ちにして観るような事態を期待していないかもしれない。
だからどの時点から見ても視聴者の目を引くように瞬間芸のギャグの陳列のような喧しい長時間バラエティーに依存している。
視聴者は中途から突然観ても、中途でチャンネルを切り替えても何ら構わないようになっている。
ゴロゴロしている身に煩い番組は合わないので、寝る前に観るならドラマを眺めることが多い。
戸田恵梨香、ムロツヨシの「大恋愛~僕を忘れる君と」を続けて観た。
「大恋愛」は、どうしたのだろうというくらい陳腐な筋立てだ。
思い浮かんだのは「私の頭の中の消しゴム」という映画だった。
ドラマや映画は似たような設定でたくさん作られてきた。
こういう難病・純愛ドラマは、かつて観たことがあると誰もが思い出すのに、視聴率を稼げるからと繰り返し作られるものと思えばよいのか。
(たしか)第3話に、「尚(なお)」(戸田恵梨香)が、アルツハイマーになって徐々に記憶を失うくらいなら、余命数か月のがんと言われたいと主治医に嘆くシーンがあった。
関節リウマチ患者の、まったく同じ絶望を読んだことがある。
今日明日、死んだりはしない、しかし、だんだん動けなくなっていく、だんだん自分がダメになっていく。「がんは死刑、リウマチは終身刑。」「がんのほうがよかった。」
難病患者はこういうドラマをどういう風に見るのだろう。
へんに美化されたら患者はたまらない。
ドウシテアナタハ「尚」(アルイハ「真司」)ノヨウニ振舞エナイノ?
もともとこの筋立てがありふれて陳腐なのは
男性主人公にとって「都合のいい女子」が何もしなくてもやってきて、勝手に自分を好きになってくれて、Hなことまでさせてくれるというマンガ、ゲームの鉄板ネタ*3が、そっくり採用されているからである。
(この女子バージョン、イケてない女子がクラスイチイケメンで頭もよくスポーツもできる王子様に、なぜか自分だけが特権的に愛されるというのも、少女マンガの鉄板ネタだそうである。)
こういう難病・純愛ドラマに、戸田恵梨香もムロツヨシもミスキャストのように合わないところがある。
二人の短いトーク動画を見ていたら、戸田はムロツヨシを見ると笑い出したくなると言うし、ムロツヨシは本当に自分の役なのか脚本を何度も見返したと言っていた。
ムロツヨシは「君を守ってみせる」なんて役柄がもっとも合わない脱力が魅力なのに、降ってわいたような女性の苦難に真顔で力を込めていくことに違和を感じる。
しかし、涙なんかより歯茎剥き出しのカラカラという乾いた笑いの方がはるかに似合う戸田がだんだん難病にむしばまれていくという違和が、妙に哀しくみせているところもある。
予定調和的な愛と別れの、お涙頂戴ドラマを期待している視聴者もいるだろうし
青白くひ弱な、いかにも佳人薄命というような美女でもなく、イケメンで頭もよくスポーツ万能の王子様とはいえない男の、場違いな難病・純愛物語の行方を
今後のどのような展開でも許容しそうな不透明さを
ワタシのように面白がって観ている者もいるかもしれない。