たかがリウマチ、じたばたしない。

2015年に不明熱で入院、急性発症型の関節リウマチと診断された中高年男子。リハビリの強度を上げつつ、ドラッグフリー寛解≒実質完治を目指しています。

本当は怖い「馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。」

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藤森かよこ著「馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。」KKベストセラーズ、2019.12)は、356ページにもなる女性のためのハウツー本である。

1953年生まれの著者*1

  • 青春期(37歳まで)
  • 中年期(65歳まで)
  • 老年期(死ぬまで)

のステージに分けて、女性が長丁場の人生を生き抜く心得を指南したものである。

 

サクッと軽快に生きてみようなどという、薄っぺらな処世訓(こういう連中は、必ず「○○すべき5つのこと」なんて書きたがる)とは遥かに隔たった、標題どおりの超マジメ、赤裸々な処世術に溢れていて、現在、アマゾンのフェミニズム第1位を突っ走っている。

 

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著者は、結婚については、一度くらい、してみたいのならしたほうがいい、として次のように言っている。

 

・・・・・あなたはブスだから、ロマンチックな恋愛の機会には恵まれない。男性に一目ぼれされてプロポーズされるということはない。昔風に言う「玉の輿」に乗るような機会も無い。貧乏なのだから、パワーファミリーとパワーファミリーが結びつく閨閥結婚が用意されることもない。

しかし、ブスなあなたに好意を持ってくれる男性は珍しいので、結婚相手を選ぶのに迷って困るということもない。現実的に身の丈にあった結婚と結婚相手について、冷静に考えざるをえないのは、あなたの大きな強みだ。

あなたは貧乏なので働くことは厭わないので、結婚相手に高収入を求めることもない。定職があり真面目に働く男性ならばいいと思える堅実さが身についている。

男性の身長も気にならない。高身長の男など、病気で寝込むと邪魔なだけだ。高齢者施設でも大柄な老人は入居を断られがちだそうだ。

あなたは学歴なども気にしない。自分が馬鹿なのに、結婚相手に高学歴を要求しない。・・・・・

いっしょにいて気持ちが悪くない人ならば何とかなる。食事を三回共にして気にならないのならば、有望だ。ものの食べ方が気になるのならば、その相手はやめておいたほうがいい。(101~103ページ)

 

 本当に怖いことを、さりげなく書いている。

「食事を三回共にして気にならないのならば、有望だ。ものの食べ方が気になるのならば、その相手はやめておいたほうがいい。」などはゾッとするほど怖い話だ。

 

これはたとえば、企業の中枢にいる幹部が、他の事業部門の有能な社員を自分のセクションに抜擢しようと目を付けていていよいよその時期が来たとき、あるいは社外・海外での中長期の研究・研修要員候補の最終選考をしなければならないようなとき

一切を明らかにしないままサシで食事をしてみるという常とう手段と、たいへん似ている。

 

瞬発力のような業務能力など人事査定を読んでいればわかる。そんなものを見ているわけではない。自分の能力をさらに伸長させていこうとする健全性や部門を引っ張っていける人間性を見たいわけだ。

箸の使い方、肴を食べる順序、口のなかで噛む音、言葉づかい、物腰で大体わかってしまう。

その基準を言うことは難しいが、それは相手の「育ちの良さ、悪さ」を見極めているというのが一番近い。

 

ξ

著者は、人(男性)に貼られた地位・財力のレッテルなど、あなた(女性)次第でどうにでもなると言っているようである。

そんなものを剥ぎ取って剥ぎ取りまくったあとに、一種、「育ちの良さ」を相手に見出せなかったら、まず結婚の対象にはならないと言っているようだ。

だから馬鹿でチビでデブで貧乏な男性は、それ自体で「馬鹿でブスで貧乏」な女性の相手にはならないというわけではない。

一緒にいて気持ちが悪い、ものの食べ方がへんだ、と思われてしまうような男性は、世間体を剥ぎ取りまくった「馬鹿でブスで貧乏」な(実は聡明な)女性には相手にされないということだ。

 

これは大変なことだ。これは呑気な生易しい話ではない。

馬鹿チビデブ貧乏で生きるしかない男性であるあなたは、この著者と同じ想像の場(=低スペック)にしっかり心身を置いて、生きるハウツーを徹底的に考え直すことから始めなければならないと思えたからだ。

そして(男女差は関係ないとしてみると)遅くとも中年期までの到達点を、著者は、はっきり言っている。

 

純粋まっすぐに革命の大義など信じると、「彼ら」の使用人たちに翻弄され利用されるだけだ。・・・・・

この社会の構造や仕組みがうすらぼんやりと見えるようになったあなたは、そのような空騒ぎに巻き込まれてはいけない。

この考え方は、「何をしても世の中は変わらないよ」と斜に構えるニヒリズムではない。・・・・・

「彼ら」が繰り出す現象を眺めつつ、その現象の奥にある真実について考えつつ、その現象に侵食されない自分を創り生き切ることだ。

中年になったあなたは、それぐらいの責任感を社会に持とう。もう、大人なんだから。

社会があれしてくれない、これしてくれない、他人が自分の都合よく動かないとギャアギャア騒ぐのは、いくら馬鹿なあなたでも三七歳までだ。(164~165ページ) 

 

帯広告によれば、本書には、「馬鹿」は197回、「ブス」は154回、「貧乏」は129回登場するそうである。

ワタシは半病人とはいえ、こういう挑発的なマジメ本には「ファイト」が湧く。

 

 

*1:アメリカの国民的作家・思想家のアイン・ランド研究の第一人者。アイン・ランドのベストセラー「水源」、「利己主義という気概」を翻訳刊行した。(引用書略歴による)