たかがリウマチ、じたばたしない。

2015年初めに不明熱で入院、急性発症型の関節リウマチと診断された中高年男子。リハビリの強度を上げつつドラッグフリー寛解を目指す。そしてゆっくりとリウマチ治療について考えていきたいと思います。

炎症反応なし、でも痛む、どうすれば

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ξ

関節リウマチがコントロールされているかどうか、リウマチ医は、ESR、CRP(いずれも炎症の程度)、MMP-3(関節破壊の程度)といった血液検査結果に、もっとも注目して判断するように

患者も血液検査結果をベースに症状を考えていくようになる。

そこで血液検査の数値が良いのに腫れや動作時の痛みが強くある(=疾患活動性指標でいう患者VASが高い)、どうすれば? という問いが出てくる。

関節リウマチのステージを2つにわけて考えてみる。

 

【①炎症反応が乏しく、エコーでも活動性滑膜炎は認められない、しかしX線上では関節裂隙が狭小化している場合】

 

これは炎症反応が安定したものの関節の変形が疑われる場合である。

リウマチ医のケーススタディを見ると、整形外科の出番になる。

治療法は、薬物では鎮痛剤トラムセット等への移行、リハビリテーション、手術となっている。

 

ξ

また早期関節リウマチ患者では、血液検査の数値が良くなったのに腫脹や圧痛やズキンとする痛みや動作時の痛みが強くある(=疾患活動性指標でいう患者VASが高い)、という上記とよく似た症状のあることが多い。

 

【②炎症反応が乏しく、エコーでも活動性滑膜炎は認められない、X線上では関節軟骨の変形が多少あるものの保存または異常なしとなる場合】

 

これはもし原因となる膠原病その他の疾患の合併がないとすれば、感覚神経異常である線維筋痛症心因性の疼痛も考えなくてはならないのでやっかいになる。

患者の判断はとても難しいが

治療の結果、炎症反応の陰性が続いているなら

「痛み」は慢性疼痛(ここでは神経障害性疼痛や非器質的疼痛や整形外科領域の疼痛など)と考えて、抗リウマチ薬やNSAIDsだけではない別の治療ステージに、誰もが進もうとするのではないだろうか。

 

そもそも炎症反応が陰性なのに早期の関節リウマチと診断されている場合もまれにあるかもしれない。

手指などの小関節の関節炎に限局していれば、炎症反応は陰性の場合があるからである。

これは僕の体験にないのでわかりにくい世界だが、新分類基準のスコアリング*1の点数が低ければ、やはり別の治療ステージに進むべきかも、という思いはある。「痛み」は、関節リウマチからはみ出していることが多いのも確かである。

 

ξ

関節リウマチの寛解基準のなかで、もっとも厳しいのはBoolean型の寛解基準(ACR/EULAR 2011年)である。

DAS28で寛解を達成していても関節破壊が進行するケースが少なからずあったので新しい基準を設けたとのことである。

それは次のようなもので、4条件を同時に満たすこととされている。(ただし日常臨床においてはCRP≦1を除外してよいとする)

  • 28関節中の圧痛関節≦1
  • 28関節中の腫脹関節≦1
  • CRP≦1
  • 患者の全般健康度評価≦1(0~10㎝のVAS。なおこの患者全般VASは疼痛VASではない)

この4条件は言うまでもなく関節リウマチ由来という前提が必要である。

圧痛も腫脹も変形性関節症であり得るしCRP感染症でも上昇する。

 

しかし関節リウマチの症状がかなりよくなったとしても、患者全般VASが1以下というのは相当難しい。

僕には朝のこわばり、動作時痛は残存しているので「疾患活動性が全くないと感じられる」と「疾患活動性がもっとも高いと感じられる」の間でマークするとすれば2を下回ることは無理である。

つまりBoolean型の寛解基準では、僕は今でも臨床的寛解とはいえないと思う。

 

一患者としては、患者の全般健康度評価という、関節リウマチ由来の「健康状態」のVASであることを患者に理解させること以上の規制がない指標に疑問がないわけではない。

この指標が含まれるために、例えば28関節に簡素化しても概ね臨床的に正しい診断ができるのだという、実用的かつ大掴みの寛解の計算方法になっている。

血液検査のように因果関係のありそうな数値がパチンと出ないと気が済まない性分ではなかなかスッと入ってこないのかもしれず、そんな欧米人とのセンスの違いを感じさせるところもあって面白い。

いずれにしてもMTX、生物学的製剤の登場により早期治療を開始すれば寛解が可能になった時代の、関節破壊のない段階での治療目標として策定された厳しい基準である。

 

ξ

しかしこれは、リウマチ治療を弱めて関節破壊を進行させてしまう迂闊さを回避できMTXや生物学的製剤の増量・変更・継続がしやすくなる一方、減薬・休薬の判断を遅らせる懸念がある。

ハードルの高い寛解を目標に投薬を続けていれば、薬物有害事象の確率を上げ、無用な患者QOLの低下(たとえば肺炎、感染症)や経済損失を招くことにもつながっていく。

このように積極的な早期治療派と、あわてれば誤診の恐れもあるという慎重派との間で、いくらか現場は混乱しているという医療機関の記事も見た。

 

患者が生物学的製剤の使用を考えるとき、ガイドラインしか頼るものがないのでそれを眺めてきたが

抗リウマチ薬(DMARD)を3か月以上使用してもコントロール不良の患者を対象に、次の3項目を満たす者としている。

  • 圧痛関節数 6以上
  • 腫脹関節数 6以上
  • CRP 2.0以上またはESR 28以上

一見、ハードルが高そうにみえるが、例外的にDAS28‐ESR 3.2(疾患活動性が中程度)以上の場合もOKとされている。

DAS28‐ESR 3.2を計算してみると、圧痛関節数、腫脹関節数それぞれ1、患者全般VAS 30と非常に低く置いてもESR 15であれば、製剤の投入は可能になる(もちろん計算上)。

このESR 15とは男性はやや亢進が認められる範囲、女性は正常値の範囲上限にすぎない。

つまり現状では、ESRの上昇が関節リウマチ由来であるかぎり生物学的製剤投入の基準は相当低く設定され医師の裁量の余地が大きいと考えられる。(このため担当医と僕は投入についてかなり話し合うことになったともいえる)

 

現在の潮流は、早期診断・早期治療をすすめる、寛解のレベルを突き詰めハードルを上げていく、その場合の有力な手段である生物学的製剤の早期投入を容易にする、ように動いているとみえる。

しかしそれは一方的なプロセスに思える。

 

寛解基準を定義し直す。

すなわち寛解とはバイオフリー基準およびドラッグフリー基準とする。

その際、滑膜炎の残存がないようエコーによる画像診断基準を加える。

強力な薬を使い続けたままの寛解という区分が、患者にとってどれほどの意味があるのだろう。寛解と完治は違うなどと一般人に分かりにくいことをグダグダ言わない。いささか再発しやすい疾患にすぎないとする。

バイオ(およびドラッグ)フリー基準は、患者QOL(ADLを含む)、経済負担、生命予後、薬物有害事象など、それらすべての一層の改善の観点から投薬の開始・休止(フリー)・再投与の最適値を見出し設定していく。

それを踏まえて患者ごとに決定していく。

といった近未来を僕は空想している。

 

*1:スコアリングに至る新分類基準(ACR/EULAR)は次のとおり。

●関節腫脹が1か所以上ある

●他の疾患で説明がつかない

●通常のX線上で骨びらんがみられたら関節リウマチとみなす

骨びらんがみられない

●スコアリング(圧痛・腫脹関節数、RF因子・抗CCP抗体、滑膜炎の期間、CRP・ESRの得点評価)

●6点以上ならば関節リウマチとみなす